研究科公開発表平成29年度

平成30年2月5日(月)、平成29年度公開発表会が開催され、大学院2年生8名の研究が発表されました。それぞれの発表を紹介します。すべての研究は、関西医療大学倫理委員会の承認を得て、対象の方からの同意を得て実施されています。


「大殿筋の筋力強化における効果的な股関節肢位の検討」 伊藤  陸

 

 大殿筋強化での効果的な股関節肢位を知ることを目的に、外転角度を変化させた際の股関節伸展位保持時の大殿筋の筋活動を検討した。健常者13名(平均年齢23.8歳)を対象に、腹臥位、股関節伸展位での外転-10°、0°、10°、20°、30°にて、大殿筋上部線維、下部線維、その中間2つの線維の筋電図を測定した。腹臥位を基準値とした筋電図積分値相対値を、各角度で比較した。大殿筋上部線維は10°、20°、30°で、大殿筋下部線維は-10°で有意に筋活動増大を認めた(有意水準は5%)。中間の線維は内転、外転位それぞれで筋活動増大を認めた。大殿筋上部線維は外転位で移動軸の大腿骨と走行が一致し、筋活動が増大した。股関節内転作用を有する大殿筋下部線維は内転位で筋活動が増大した。中間の線維は内転、外転位で作用が変化する可能性があり、各肢位で筋活動が増大した。大殿筋の線維による作用の違いを考慮した、評価、強化が重要であることがわかった。


「3日間連続した運動イメージは運動の正確性を向上させ、脊髄前角細胞の興奮性も変化させる」
今奈良 有

 

 3日間連続した運動イメージが運動の正確性と脊髄前角細胞の興奮性に与える影響について検討した。対象者11名の、安静時と30%MVCのピンチ動作の運動イメージ時に、母指球筋上の筋よりF波を導出した。30%MVCからのピンチ力誤差を算出し、運動イメージ前後で運動の正確性について3日間連続して検討した。別日に、運動イメージ無しでのコントロール試行を計測した。ピンチ力誤差は1日目の運動イメージ後より2、3日目の運動イメージ前後に有意な低下を認め、2日目の運動イメージ後より3日目の運動イメージ前後に有意な低下を認めた。コントロール試行では、全課題間に有意な変化を認めなかった。運動イメージ時の振幅F/M比相対値、出現頻度相対値の変化は様々なパターンを認めた。3日間連続した運動イメージは運動の正確性を向上させた。脊髄前角細胞の興奮性については、増加と減少の変化が重要であると考えられた。


「上肢の前方挙上とリーチの違いは前方挙上90度位保持時の肩甲骨運動と肩甲骨周囲筋の活動に相違を与える」 楠  貴光

 

 肩関節運動時の肘関節運動の有無が、肩甲骨肢位と筋活動に与える影響を検討した。対象は、健常者10名(平均年齢24.1歳)の両上肢とした。課題は、座位にて上肢下垂位から肘関節伸展位で肩関節屈曲し前方挙上90度位を保持する挙上課題と、肘関節運動を伴い肩関節屈曲し保持するリーチ課題とした。前鋸筋と僧帽筋の上部線維、中部線維、下部線維の筋電図積分値を測定して、各課題の結果を比較した。同時に肩甲骨肢位変化を計測した。筋電図積分値の比較では、前鋸筋はリーチ課題、僧帽筋上部線維は挙上課題で高値であり、僧帽筋中部線維、下部線維の差はなかった。肩甲骨肢位はリーチ課題にて外転し、挙上課題にて挙上した。前鋸筋は肩甲骨外転・上方回旋、僧帽筋上部線維は鎖骨挙上位保持作用を有し、各課題の肩甲骨肢位も異なった。上肢機能の評価には、肘関節運動の有無も配慮する必要性が示唆された。


「手指における観察課題の違いが脊髄神経機能の興奮性へ与える影響の相違について ―小指外転筋を用いた検討―」 髙崎 浩壽

 

 運動観察を理学療法へ応用するには、その効果の知見を得る必要がある。本研究では、異なる手指の運動を観察した際の脊髄神経機能について検討した。対象は健常者18名(平均年齢25.7歳)とした。F波は右小指外転筋より導出し、安静時と運動観察時にそれぞれ1分間F波を測定した。運動観察のために提示する映像は、右手の小指、環指、中指、示指の屈伸運動と母指の内外転運動の5条件とした。検討項目はF波出現頻度、振幅F/M比とし、Wilcoxonの符号付順位和検定を用いて比較し、有意水準を5%とした。小指の運動観察時にF波出現頻度、振幅F/M比が安静時より増加した。また、母指・環指の運動観察時も振幅F/M比が増加した。小指外転筋の収縮を伴った運動を観察したことで大脳皮質が賦活され、下行性線維を介して当該筋に対応した脊髄神経機能へ影響を与えたと考えられた。


「座位側方リーチ動作の速度の違いが、脊椎・骨盤帯の運動と筋活動に与える影響 ―1秒課題、2秒課題による検討―」 西谷 源基

 

 理学療法では体幹筋の筋活動促通を目的として、側方リーチ(以下:リーチ)を行うことがある。一般的に、圧中心はリーチ前から非リーチ側へ移動するが、詳細な運動、筋活動に関する報告は少ない。そこでリーチ前における脊椎・骨盤帯の動きと筋活動について検討した。対象は健常男性20名(平均年齢30.8歳)とし、1秒間(1秒課題)、2秒間(2秒課題)のリーチを実施した。脊椎・骨盤帯にマーカーを貼付し撮影した画像を解析し、各マーカーの座標を算出した。同時に体幹筋群の活動を検討した。リーチ前から上位胸椎はリーチ側へ、下位腰椎・骨盤帯は非リーチ側への移動を認め、これらは1秒課題で増大していた。この時、体幹側屈作用を有するリーチ側体幹筋群の活動を認めた。リーチ側体幹筋の活動でリーチ前から上部体幹はリーチ側へ、下部体幹・骨盤帯は非リーチ側へ移動し、この運動はリーチ速度を増加させる要因と考えられた。


「口頭指示の違いによる立ち上がり動作における脊柱および下肢関節の運動変化」 西村  健

 

 口頭指示に伴う立ち上がりの運動変化を理解し、理学療法に応用することを目的として検討を行った。対象は、健常男性20名(平均年齢24.2歳)とした。端座位から「お辞儀をして立ち上がって下さい」(お辞儀立ち上がり課題)と「立ち上がって下さい」(立ち上がり課題)の口頭指示後に立ち上がりを実施した。脊柱、下肢関節の角度変化に伴う筋活動と殿部、足底部の圧中心変化の分析と総動作時間、殿部離床時期を計測した。立ち上がり課題と比較してお辞儀立ち上がり課題は、屈曲相に頭頸部、胸椎部屈曲が増大し、座圧、足底圧移動の遅延に伴い、前脛骨筋が殿部離床前から活動した。股関節屈曲は乏しく、大殿筋は殿部離床時から活動した。総動作時間と殿部離床時期は遅延した。お辞儀立ち上がり課題は、頭頸部、胸椎部屈曲増大により股関節屈曲が乏しいことで重心移動と筋活動が遅延したと考えられた。お辞儀立ち上がり課題は、筋活動、重心移動、動作速度を遅延させることがわかった。


「Box and Block Testを用いた運動イメージのスピードの違いは脊髄神経機能の興奮性を変化させる」 松原 広幸

 

 Box and Block Test(以下、BBT)を用いた運動イメージのスピードの違いが脊髄神経機能の興奮性に及ぼす影響について、F波を用いて検討した。対象は、右利きの健常者20名(平均年齢26.1±7.7歳)とした。運動イメージは、右手の母指と示指でBBTを1分間に30回実施するイメージ(課題1)と50回実施するイメージ(課題2)の2課題を、メトロノームの聴覚音を用いて実施した。課題1と課題2はランダムに実施した。安静座位と課題1、課題2の運動イメージ試行中の振幅F/M比、出現頻度の変化を比較検討した。振幅F/M比、出現頻度ともに安静時と比較して課題1と課題2で有意に増加し、また課題2と比較して課題1で有意に増加した。BBTを用いた運動イメージでは、対象者にとって困難なスピードではなく、実運動にあったスピード設定を行うことで脊髄神経機能の興奮性が増大する可能性が示唆された。


「ランダム化比較試験による若年女性の冷え症に対する円皮鍼治療の効果」 三浦 大貴

 

 若年女性の冷え症に対する円皮鍼治療(R群)の効果を、プラセボ円皮鍼治療(P群)を対照にランダム化比較試験(RCT)で検討した。対象は、女性22名(平均年齢19.6歳)とした。対象者に、恒温恒湿室での安静時と起立試験による体温測定を実施した。その結果から、対象者の冷え症を四肢末端型、内臓型、下半身型、混合型に分類後、R群とP群に無作為割付し、週2回、計8回の当該円皮鍼治療を行った。主要outcomeはVisual Analogue Scale(VAS)による冷え症の程度、副次的にはSF-36®のスコアとした。解析は、VASが当該治療前後で9mm以上減少した場合を「有効」、それ以外を「無効」としてFisher直接確率法を行い、SF-36®のスコアは当該治療終了後の効果量を算出した。解析対象はR群9名、P群10名となった。VASの有効はR群3名、P群1名で有意差はみられなかった。SF-36®のスコアでは、R群に中等度の効果量はみられなかった。R群の効果がみられなかった要因として、治療前のSF-36®の低スコア傾向、タイプ分類による重症度の偏りなどが示唆された。若年女性の冷え症型分類については、多型を簡便に判定できる目処が立った。RCTによる冷え症の円皮鍼治療については、プラセボ円皮鍼治療を超える効果はみられなかった。 


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