研究科公開発表平成25年度

平成26年2月3日(月)、平成25年度 公開発表会が開催され、大学院2年生7名の研究が発表されました。それぞれの発表を紹介します。文献研究を除くすべての研究は、関西医療大学倫理委員会の承認を得て、対象の方からの同意を得て実施されています。


「古医書からみた交会穴についての考察」 植村 祐一

 

鍼灸学で特に重要な経穴のうち、交会穴(こうえけつ)に着目して、現存する39冊の古医書を参照して考察した。その結果、交会穴が存在する経絡は、十二経脈では足少陽胆経が多く、奇経八脈では任脈が多かった。交会する経脈が多かった交会穴は、陽経に属する経穴が多かった。また、要穴との関係では交会穴は募穴が多かった。このような結果から、交会穴の特徴として流注が長く頭部や体幹部に存在する経脈と関係が深いと思われる。また、体幹前面部には要穴として募穴が集中していることから、交会穴と募穴は関係が深いと考えられた。交会穴は複数の病証に対応できると言われている。このようなことから、交会穴を臨床で使用することは意義があると思われる。


「合谷穴への経穴刺激理学療法の抑制テクニックが母指球筋、短母指外転筋に対応した脊髄神経機能に与える影響 -F波を用いた検討-」 片岡  新

 

通常、循経取穴を考慮して用いる経穴刺激理学療法が、経絡の走行部位以外の筋に対応した脊髄神経機能の興奮性に与える影響について、手陽明大腸経に属する合谷穴への経穴刺激理学療法(抑制テクニック)前後における母指球筋、短母指外転筋のF波で検討した。健常者10名(平均年齢27.2歳)を対象とした。背臥位で、経穴刺激理学療法前後における正中神経刺激F波を母指球筋または短母指外転筋から導出した。合谷穴への経穴刺激理学療法の圧刺激持続時間は1分で、F波は安静時、圧刺激時、圧刺激直後、5分後、10分後、15分後に記録した。F波出現頻度は母指球筋と短母指外転筋のいずれにおいても、安静時と比較して刺激後に有意に低下した。振幅F/M比は短母指外転筋において、安静時と比較して刺激時に増加、刺激直後に低下した。合谷穴への経穴刺激理学療法により圧刺激が上位中枢の興奮性に影響を与えたため母指球筋、短母指外転筋に対応する脊髄神経機能に影響を与えたと考える。合谷穴への経穴刺激理学療法は母指球筋、短母指外転筋に対応する脊髄神経機能の興奮性を刺激時は促通、刺激後は抑制することが示唆された。


「集毛鍼刺激が脊髄神経機能の興奮性に与える影響 ‐刺激部位による影響の違い-」 髙橋  護

 

健常者10名(平均年齢25.3歳)を対象として、集毛鍼刺激の刺激部位の違いが脊髄神経機能に与える影響をH波で検討した。腹臥位で、脛骨神経刺激でのヒラメ筋H波を集毛鍼刺激前後に導出した。集毛鍼刺激はアキレス腱、築賓穴、ヒラメ筋筋腹上に行った。全試行で、集毛鍼刺激中の振幅H/M比は安静時と比較して低下した。築賓穴への集毛鍼刺激では、安静時と比較して刺激後に振幅H/M比を増加させた。アキレス腱、ヒラメ筋筋腹上への集毛鍼刺激における振幅H/M比は、刺激後に安静時と同様の値まで回復した。集毛鍼刺激は、刺激部位に対する同一デルマトーム上の抑制性介在ニューロンを興奮させる可能性があり、集毛鍼刺激は刺激中に脊髄神経機能を抑制させた。しかし、築賓穴への集毛鍼刺激後には、脊髄神経機能を促通させたことから、経穴には特異性があり、脊髄神経機能を促通する可能性が示唆された。


「聴覚刺激の刺激間隔の変化に対するリズムの予測が筋電図反応時間に及ぼす影響」 高橋 優基

 

1500msを基本間隔とし、リズムの変化を意識的には認識できない基本間隔の5%以内のリズムの変化が筋電図反応時間(EMG-RT)に及ぼす影響を検討した。対象は利き足が右の健常者14名で、聴覚刺激を合図に素早く右足関節を背屈する課題を実施した。1500ms間隔で10回呈示する条件1、1463~1537ms(1500msの5%)の範囲で変化する条件2、1350~1650ms(1500msの20%)の範囲で変化する条件3を設定し、EMG-RTの変化を検討した。各条件ともに1回目と比べ2回目と3回目、2回目と比べ3回目のEMG-RTが有意に短縮した。条件3は3回目と比べ7回目以降で有意に遅延した。いずれの条件も1回目の刺激が予告信号となり、運動の準備状態が高まったため2回目と3回目のEMG-RTが短縮した。条件2では5%以内の変化を予測可能であったため素早く反応できた。条件3では4~6回目で変化に気づき、7回目以降では予測が乱れて反応が遅れた。1500msを基本間隔とした聴覚刺激では、5%以内の変化は運動の周期性を維持できるが、20%では運動の周期性が乱されることがわかった。


「手指対立運動の運動イメージが上肢脊髄神経機能の興奮性に及ぼす影響-イメージ想起能力を用いた検討-」 前田 剛伸

 

運動イメージの効果を得るために重要とされるイメージ想起能力を評価し、運動イメージの効果との関連をF波で検討した。対象は健常者14名(平均年齢25.1±4.7歳)とした。Vividness of Movement Imagery Questionnaire(VMIQ)でイメージ明瞭性を測定し、F波測定は安静時と複雑性の異なる3種類の運動イメージで行った。安静時と各課題のF波分析項目および、VMIQとF波分析項目の相関を検討した。振幅F/M比は安静時に比べて課題1、2で有意に増加した(課題1:p<0.05、課題2:p<0.01)。課題1、2、3のF波出現頻度は、VMIQの一人称得点と有意な相関を認めた(課題1:rs=-0.52、課題2:rs=-0.59、課題3:rs=-0.53、p<0.05)。複雑な運動イメージでは脊髄神経機能の興奮性がより増加する可能性が示唆された。効果的に運動イメージを行うには一人称イメージが有効であり、一人称イメージの明瞭性と脊髄神経機能の興奮性に相関がみられた可能性が考えられた。本研究からも、イメージ想起能力は運動イメージの結果に影響を及ぼす可能性が示唆された。


「運動頻度の違いが体性感覚機能に及ぼす影響について -短潜時体性感覚誘発電位を用いた検討-」 山本 吉則

 

健常者13名(平均年齢25.0±2.9歳)を対象として、体性感覚誘発電位を用いて、運動頻度の異なる手指反復運動が体性感覚機能に及ぼす影響を検討した。安静条件(安静背臥位を保つ)、注意課題条件(0.25Hz、0.5 Hz、1 Hz、2 Hz、3 Hz、4Hzの頻度の聴覚音に注意を向ける)、運動課題条件(上記の頻度の聴覚音を合図とした右示指中手指節関節屈曲・伸展の反復運動)の実施時に体性感覚誘発電位を導出した。運動課題条件でN20、P25振幅は安静時と比べ2Hz以上の頻度で低下した。その他は有意差がなかった。この結果から、2Hz以上の運動頻度では運動に伴う入力量や出力量の増加により不必要な感覚入力を排除するgatingが生じると推察した。理学療法で感覚入力を促す際には高頻度の運動よりも低頻度の運動の方が適していると考えられた。2Hz以上の運動頻度では、3b野および3b野より上位レベルの体性感覚入力を抑制する可能性が示唆された。


「顔の筋肉に対する等尺性運動が及ぼすアンチエイジング効果-フェイシャルエクササイズの客観的評価-」 織田 育代

 

健常人女性24名(20~65歳)を対象として、顔の筋肉に対する等尺性運動が及ぼすアンチエイジング効果について検討した。恒温恒湿度室(25℃/55%)にて顔面部に対する等尺性運動(以下:フェイシャルエクササイズ)を実施した。効果は、口角部の血流量、顔面全体部の皮膚表面温度、筋硬度、復元率及び頬部画像(鼻尖部から頬凸部までの距離:腹臥位及び背臥位)を測定して評価した。フェイシャルエクササイズにより、血流量の有意な増加、皮膚表面温度の有意な上昇、筋硬度の有意な増加、復元率の有意な改善及び鼻尖部から頬凸部(腹臥位時)までの距離の有意な延長が認められた。特に、40歳以上の被験者で、皮膚表面温度の上昇、筋硬度の増加及び復元率の改善が有意に高かった。40歳以上の被験者は、40歳未満の被験者に比べて筋肉の機能低下が認められたが、フェイシャルエクササイズにより改善することが考えられた。フェイシャルエクササイズは、アンチエイジング効果をもたらす可能性が示唆された。


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