保健医療学部 臨床検査学科細胞診断学を学び始める人達へ伝えたいこと

2017年12月22日


保健医療学部 臨床検査学科  矢野 恵子

 臨床検査の中に細胞診検査が取り入れられて半世紀が過ぎました。細胞診検査は患者さんの体をほとんど傷つけることなく採取された検体を主な対象とすることから、がんのスクリーニング検査として発展し、現在では、内視鏡下に病変部を擦過する、しこりを針で吸引するなど、積極的に採取された検体に対しても幅広く実施され、がん診療に欠かせない検査となっています。細胞診断は、初めに標本をスクリーニングして異常な細胞を見つけ出す細胞検査士と、見つけ出された細胞を最終的に判断する細胞診専門医によって行われており、スクリーニングを担う細胞検査士の責任は重大です。細胞検査士は日本臨床細胞学会にて資格認定され、認定試験は臨床検査技師資格を有し一定の条件を満たした者が受験することができます。受験資格に関しては細胞検査士会ホームページに詳細が記載されていますので参照して下さい。本学は日本臨床細胞学会に全国で8番目の大学内の細胞検査士養成課程として認定され、平成30年度入学生より臨床検査技師と細胞検査士のダブルライセンスが取得可能な大学となりました。そこで、細胞診を学び細胞検査士を目指すにはどのような心構えが必要であるか、私の考えを皆さんに伝えたいと思います。
 細胞診検査は、光学顕微鏡下でスライドガラスに塗抹された細胞を観察し、良悪性、感染症、炎症の程度などについて判断するものです。そして、細胞診検査の主たる目的である悪性細胞に関しては、悪性への変化は細胞の核の中にある遺伝子に傷がつくことがきっかけとして始まり、たくさんの変化が積み重なることにより発がんし、それぞれの段階で形態学的な変化がみられることが知られています。細胞診検査により、現在の状況を判定することで、患者さんに適切な治療を提供することができます。細胞検査士は最前線で、がん、あるいは前がん病変に罹患した患者さんのために働くことができる大変やりがいのある仕事です。細胞検査士が細胞診標本の隅々まで観察し、個々の細胞を判定する際の基準となる形態学的な所見は、細胞集団においては、構成する細胞の大小不同性の有無、配列の不規則性の有無、辺縁の所見などで、単個細胞では、大型かどうか、奇妙な形をしているか、核と細胞質の割合はどうか、細胞質の染色性に変化はあるかなどとされており、とても多くの項目があります。さらに、正常の細胞所見に近い悪性細胞があるかと思えば、悪性細胞のような良性細胞も存在し、そのように例外的な形態を示す細胞の判定には、幅広い知識と多くの経験が必要となります。初学者はその複雑さに混乱するのではなく、ひとつひとつがどのような病理学的変化に基づくものであるのか、確認しながら学習を進めることが肝要です。そうすることにより、ひとつの症例から多くの事柄を学び、自らの中に積み重ねることができるのです。すなわち、細胞診断学は、生物学、生化学、生理学、人体の構造、血液学、免疫学、病理学総論、病理診断学、病理検査学などをしっかりと学習し、応用して初めてその理解が深まる学問なのです。
 細胞診断学は、複雑で奥深くゆえに魅力的な学問です。個々の細胞の中にある小宇宙に思いを馳せながら、"異常な所見を拾い上げるだけの細胞検査士"ではなく、"細胞を思考する細胞検査士"を目指してください。 




学部・大学院FACULTY/GRADUATE SCHOOL