関西医療大学

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学長コラム

2021年04月05日

令和3年度 入学式式辞

新緑の春を迎え、新たに本日、ここに列席された学部生、院生のみなさん、
この度のご入学、誠におめでとう御座います。
また、誠に、残念でしたが、この式典にご出席願えなかった保護者の皆様方にも、心からお祝いを申し上げます。

さて、今も猛威を振るうこのコロナ禍の中で、皆さんは新たな大学生活を迎えることとなりました。
昨年来、本学も「大学教育」のあり方大きな変革をせまられました。対面授業を減らし、遠隔授業に切り替えるなど様々な教育方法や教育環境の改革をせまられました。この一年間目まぐるしい変化の連続でした。また、学生の皆さんのクラブ活動など「学園生活」についても大きな制限を加えることとなりました。私共も、非常に残念に思うことの連続でした。さらに、「将来」のキャリアへの展望についても、今後考えていかなければなりません。

ところで、史上最年少二十九歳の若さで、二百年を超える伝統あるドイツのボン大学の正教授に就任した、話題の哲学者マルクス・ガブリエル氏は、この新型コロナウイルスのパンデミックについて、このように語っています。
この「人々がグローバルに加速度的に行き来する時代―いわば、人と人がつながり過ぎた時代ゆえに、この新型コロナウイルスのパンデミックの災禍に襲われた」と。すなわち、人間の生活圏の拡大と密に張りめぐられた人と人とのネットワークそのものが、新型コロナウイルスの急速な拡散につながったということです。今や、世界は六人の人を介すればどんな人とも繋がる「スモール・ワールド」と言われます。

過去100年前、世界はインフルエンザ・パンデミックに襲われましたが、その恐ろしさを忘却されつつありました。しかし、この二十年間においても、新型インフルエンザ、SARS、MERS、エボラなど新種のウイルスが続々と出現しており、二十一世紀は「感染症の世紀」とも言われています。そして、私たちの生活は、このコロナ禍で「もう以前の状態に戻ることはない」、「2019年までの世界は終焉した」とさえ言われています。
この新型コロナウイルスは、麻疹やポリオとは違い、消滅する可能性は極めて低いとされます。ワクチンの有効率は、変異株の出現を考えても、決して100%にはなりません。医学的にもウイルスは決して消滅しません。すなわち、我々人類が生き抜いていくためには、将来に亘り、この「ウイルスとの共生」を考えていかなければなりません。

しかし一方で、ガブリエル氏は、この「危機は世界の倫理的進歩をもたらす」と言っています。マスクをする習慣の無かったヨーロッパにおいても、「ウイルスを拡散してはならない。相手は生命ある人間だからだ」との互いを尊重する倫理感が広がりつつあります。個々人の考え方が多様な、自由主義の国々では、此れ迄、国民の統一した行動は、極めて困難でした。しかし、今や、驚いた事に、世界中の人々が手洗いをし、マスクを着用し、ソーシャル・ディスタンスをとるなど、また、「自己隔離」ロックダウンに応じるなど、世界的にも一斉に協働行動をとるようになりました。この「新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延により、おそらく人類史上初めて、世界中で人間行動の完全な同期がみられた」と、その意義は大きいと、彼は指摘します。

このコロナ禍、環境と経済、この二つが人類の直面している真の危機です。世界中で、高齢者が感染のリスクに晒され、医療がひっ迫し、経済活動が制限され、更に海外渡航もままならない中で、若者も行き場をうしなう現状にあります。
この中で、私たちが、現在直面するパンデミックに対して、強い意志を持って大きな意識改革を行い、他人を配慮した倫理行動を行うことが要求されています。

春を迎えたとは言え、このコロナ禍の中で、皆さんは本学に入学され、勉学や研究に取り組まれることとなりました。「自粛と孤独のハンディ」を乗り越えて、「ニュー・ノーマル」な学園生活のスタイルを、今後、私たちは築いていかなければなりません。皆さんと共に、本学教職員も一丸となって、皆さんのこれからの本学での勉学ならびに学園生活を支援したいと願っております。

最後に、アメリカの作家で、思想家のヘンリー・ディビッド・ソローは、その著書『森の生活』の中で、二十八歳の誕生日を前に、自ら「孤独」を求めて、森の生活に入った理由を語っています。

「私が森に行ったのは、悠然と生き、人生の根本的な事実にのみ直面し、できればその教えを学びたいためであり、・・・・自分が生きて来た証が欲しかったからである。私は人生とはいえないようなものは望まなかった。・・・・私は深く生き、人生のすべての精髄を吸いたかったからだ。」と述べています。森の中での一人暮らしで、「人生の意味」を問い直しました。

コロナ禍での「孤独」をどう考えるかーどのような時期であれ、どのような人にとっても、この問いは、極めて重要ではないかと思います。幸い、本学は、都会の喧騒からはなれ、紀泉山脈のなだらかな丘陵に囲まれ、自然にめぐまれた環境にあります。この自然の中で有意義な学園生活を送り、一人の人間としてのあり方を問い直すことも、とても大切です。
私共も、このコロナ禍ではありますが、隔離された状況に負けないで、青春の一時期を送って頂けたらと願っています。
最後にもう一言、
ニュージーランドの首相アーダーン(Jacinda Ardern)女史は、このコロナ禍の中で、「COVID-19に対して団結せよ(Unite against COVID-19)と呼び掛け、

親切で、強くあれ。
(Be kind. Be strong.)
家にとどまり、命を救おう。
(Stay homes. Save lives.)
私たちはきっとこの危機を乗り越えられる。
(We will get through this.)

と、国民に対して訴えています。
そして、その意味を、私たちもよく噛みしめて、粘り強く頑張らなければならないと思います。

改めて、この度のご入学おめでとう御座います。ともに頑張りましょう!

“Be kind. Be strong.”

令和三年四月五日
関西医療大学学長 吉田宗平

関西医療大学 学長
吉田 宗平(よしだ そうへい)
  • 担当科目(学部)
    生命倫理
  • 大学院担当科目
    神経内科学概論、内科・神経内科学特論講義・演習
  • 学位
    医学博士
  • 取得資格
    認定内科医、日本神経学会専門医・指導医、東洋医学会専門医、NPO日本ハーブ振興会Profeesional Adviser of Herb (PHA)資格
  • 大学院(研究指導内容)
    鍼灸への神経学的アプローチとその治効機序の科学的解明、脈診の科学化とノジェらによる耳介療法の治療・診断システムの構築、ハーブ・アロマテラピーの研究