関西医療大学

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2022年04月06日

令和4年度 入学式式辞

本学にご入学の大学院生、学部学生の皆さん、また、それを支えてこられた保護者の皆さま、本日は誠におめでとうございます。

寒く長かった冬が過ぎ、菜の花、モクレン、そして桜が一斉に咲き誇り、季節は廻って今年も新緑の季節を迎えました。
その中で、今、私たちは2年前からの新型コロナウイルスのパンデミックにより個人から社会レベル、また、国々の間でも大きく分断され、経済の上でも甚大な影響を受けています。一説によれば、これも「人新世」といわれる人類による自然環境の破壊の一端であり、自然の巻き返しによる「感染症の世紀」の到来ではないかとも言われています。更に、ひと月前に勃発したロシアによるウクライナへの侵攻は今なお続いており、世界を大きく震撼させています。
大学においても新型コロナウイルスのパンデミックは人々の「絆」を切り離し、学内では孤立する不安感から学生相談室の利用やカウンセリングを必要とする学生が急増しました。特に、対面授業が出来ず、大学生活において上手く「絆」を築けない学生には大きな負担となりました。「3密」を避ける感染拡大防止のためとはいえ、大学生活の多くの面において制約が生まれてしまいました。
一方では、大学教育のシステムがICTを利用した「遠隔授業」へと急速に移行したことで、有用ではあるものの従来の「対面授業」での人と人の触れ合いの「絆」が絶たれ、学生や教職員にとっては心身ともに大きな負担となりました。また、少子超高齢化が進行するわが国では、このコロナ禍に伴い施設等に入所している高齢者が感染防止のために隔離され、病状が悪化しても家族との面会もできない状況となりました。若い世代と高齢世代が隔絶されたことは、生活の上でも知識や技術の伝達、伝承の側面で大きな支障となります。近所付き合いや交友関係の「絆」で形成されてきた地域社会の関係も機能不全に陥りました。更に、ロシアによるウクライナ侵攻が世界的にも国々の分断と対立を深めようとしています。
このように国内外において不安定で厳しい状況の中、私たちがどのように大学を発展させ、どのように皆さんと共に価値ある大学として成長していくかは、極めて重要な課題となっています。本学の建学の精神である「社会に役立つ道に生きぬく奉仕の精神」という言葉を、今、改めて問い直したいと考えています。

さて、本学は平成15年4月に関西鍼灸大学(鍼灸学部)として四年制大学に改組されて以来、今年で二十周年を迎えました。今や、関西医療大学として2学部6学科と大学院1研究科を加えた学生総数1,300名を超す総合医療大学に成長しています。しかし、人口の超高齢化が進み若い世代の減少も急速に進行する中においては、社会からの多様な要請に真摯に答え、持続可能な新たな大学へとその在り方を改革しなければなりません。今日の第4次産業革命の中で、DX化(デジタルトランスフォーメーション)を推進して効率化を図り、新たな人と人の「絆」を創生して「教育の質」の保証に取り組み、皆さんの将来にとって価値ある大学であり続けるよう、共に成長したいと願っています。

ここで、二人の偉人について触れたいと思います。
「インド独立運動の父」といわれたマハトマ・ガンジーは、第二次世界大戦のファシズムが荒れ狂う中、「真実と非暴力、そして奉仕」を提唱し、それが人間にとっての根源的価値であると時代を超えて世界に訴えました。彼は、この高邁で唯一の行動基準を「非暴力主義こそ人類の法」とも述べ、「非暴力の兵士」として不服従の姿勢を貫き、インド独立を勝ち取ったのです。このガンジーの精神は本学の建学の精神とも相通じるものがあり、また、これから医療人として成長される皆さんにとっても重要な行動基準であると思います。
もう一人、今回のウクライナにおける悲惨な戦争に関連して忘れてはならない人がいます。それは、「クリミアの天使」と呼ばれたフローレンス・ナイチンゲールです。彼女は1854年に勃発したクリミア戦争に従軍して野戦病院で献身的に負傷兵の介護に当たりましたが、多くの兵士が次々と亡くなってしまいました。その原因を追究するため、彼女は軍の膨大なデータと取り組み、悪戦苦闘しながら統計をとりました。そして、野戦病院の多くの負傷兵たちが迅速で適切な処置を受けられずに不衛生な環境に長時間放置されたままであり、戦闘というよりも院内感染によって亡くなったことを明らかにしました。彼女はそれを「鶏頭図」と呼ばれる独特のグラフで鮮やかに人々に示し、死亡率を僅か半年で40%から2%にまで激減させたのです。
ナイチンゲールは、看護の実践の中で情熱をより普遍的で確かなものにするためには、科学的な理性が必要とされる、そのためには「神の目的の尺度」、すなわち今日の統計学を学ばなければならない、と言っています。統計学は「科学の文法」とも呼ばれている学問です。

これから本学で学び、社会に役立つ医療人として成長していくため、何を身につけなければならないかを皆で考え、理性と情熱を持った実りある学園生活を送っていただきたいと思います。どうか、新入生の皆さんは、このコロナ禍と厳しい世界情勢の中であっても力強く生きぬいて下さい。私たち教職員も、この厳しい現状の中で皆さんと共に頑張りたいと思います。

最後にもう一度、この度のご入学、誠におめでとうございます。

令和4年4月6日
関西医療大学学長 吉田宗平

関西医療大学 学長
吉田 宗平(よしだ そうへい)
  • 担当科目(学部)
    生命倫理
  • 大学院担当科目
    神経内科学概論、内科・神経内科学特論講義・演習
  • 学位
    医学博士
  • 取得資格
    認定内科医、日本神経学会専門医・指導医、東洋医学会専門医、NPO日本ハーブ振興会Profeesional Adviser of Herb (PHA)資格
  • 大学院(研究指導内容)
    鍼灸への神経学的アプローチとその治効機序の科学的解明、脈診の科学化とノジェらによる耳介療法の治療・診断システムの構築、ハーブ・アロマテラピーの研究