大学について

睡眠障害に対する耳介療法の緩和効果についての検討
―交代勤務労働者に対する介入的研究―

関西医療大学 大学院2年生 百合邦子

公開発表抄録

【目的】

交代勤務労働者、特に夜勤労働をする看護師の睡眠障害に対し、耳鍼による介入が如何なる効果をもたらすかを、身体的、社会的要因を含め検討した。

【方法】

夜勤業務を行う看護師17名(平均年齢40±11.1歳女性)を対象に、2010年3月中旬~8月下旬にかけてデータの収集を行った。部位は左右耳介計4カ所に皮内鍼(0.14×5mmセイリン社)を刺入、貼付した。主観的評価には、調査票、睡眠に関する健康調査(PSQI)、朝型夜型質問紙(MEQ)、睡眠障害全般の質問項目、エップワース眠気尺度(JESS)日本語版不眠重症度質問票(ISI-J)客観的評価に、アクティグラフ(AMI社製)を用いた。対象者それぞれのデータ収集期間は全体で約2週間とした。

【結語】

睡眠効率(SE)と入眠後覚醒時間(WASO)の散布図による解析において、反応群:耳鍼後に有意に改善した群と非反応群:改善しなかった群とに分かれた。両群共に介入前後の生活状態や薬物・アルコール使用頻度に差はなく、反応群の睡眠改善は耳鍼の介入によるものと考えられた。反応群と非反応群の差異については、年齢や1ヶ月の夜勤回数とは関連がなく、非反応群の要因として、医療施設における対象患者の違いや個人的ライフスタイルの差異に伴うストレス等が推定される。今回の耳鍼介入は、夜勤労働者に対しても睡眠の質の改善に一定の有効性が確認できたが、そこには社会的背景要因の関与も大きいことが示唆され、今後さらに詳細に検討すべき課題と思われた。

指導教官による解説

関西医療大学教授 吉田宗平

交代勤務労働者、特に夜勤労働をする看護師の睡眠状態に対し、耳鍼による介入が如何なる効果をもたらすかを、初めて臨床現場で身体的、社会的要因を含め検討した点で評価できる。また、耳鍼に対して睡眠効果のあった反応群と非反応群があったことを指摘したことは、鍼灸治療における「証」を考える上で興味があり、今後の研究計画を作成する際にも重要な示唆を与える結果といえる。


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