博士後期課程 大学院生の論文が英文誌Cureus Journal of Medical Scienceに掲載されました。
本学博士後期課程2年生 井上直人さんは、副学長 鈴木俊明教授の指導のもと椅子からの立ち上がり動作、特に、上肢で支持面である座面を押すことが立ち上がり動作の殿部離床相における関節運動や筋活動に与える影響について研究しています。
立ち上がり動作を行う能力は、椅子の座面の高さ、上肢支持の有無、および足の位置に強く影響されると報告されています。今回は、立ち上がり動作における上肢支持に着目しました。立ち上がり動作において肘掛けや手すりなどの上肢支持の条件を設定した先行研究は存在しますが、上肢で支持面を押した条件を設定した先行研究は見受けられません。加えて、立ち上がり動作の殿部離床相は、殿部離床から足関節背屈最大時点までであり、身体重心が上昇する際、安定性を維持するための重要な時期であると報告されています。そこで、本研究では、上肢で支持面を押すことが立ち上がり動作の殿部離床相における関節運動と筋活動に与える影響について分析をしました。
本研究では、立ち上がる際に上肢で支持面を押す条件と上肢で支持面を押さない条件に分け、立ち上がり動作の殿部離床相における関節運動、筋活動のデータを比較しました。加えて、殿部離床相における関節運動、筋活動について、上肢圧との相関を確認しました。その結果、立ち上がり動作の殿部離床相の上肢圧は、外側、後方、下方に発生することが明らかになりました。加えて、上肢支持ありでは上肢支持なしと比較して、立ち上がり動作の殿部離床相における外側広筋の筋活動が小さい結果でした。さらに、立ち上がり動作の殿部離床相における関節運動、筋活動について、上肢圧との相関がみられました。
本研究の結果から、臨床場面において、外側広筋を中心とした膝関節伸展筋力低下を認める症例では、上肢で支持面を押すように口頭指示を行うことで、立ち上がり動作が遂行できるようになる可能性が示唆されました。
是非、ご一読ください。
