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 医科学グループの百合です。私は現在和歌山県立医科大学衛生学講座で研究をしています。今回研究を論文(Yuri K. BMJ Public Health 2025;3:e002516.doi:10.1136/bmjph-2024-002516)にまとめたので、内容を紹介します。
 今回の研究は「加熱式タバコの害に関する認識は喫煙状況で異なるか?」を検討したものです。加熱式タバコ(Heated Tobacco Products:HTP)とは新型タバコの一種で、タバコ葉やタバコ葉加工品を、燃焼させずに電気で加熱した製品です。日本では2013年12月からHTPが販売されています。2016年10月の時点で、日本は国際的に販売されているHTP製品の90%以上を消費しており、そして現在では世界的に最もHTPが普及している国となっています(Nakamura M. 日本公衆衛生誌2020;67:3–14., Tabuchi T. Tobacco Control 2018.)。HTPは紙巻きタバコ(Combustible Cigarettes : CC)に代わるものとして発売されました。そのためタバコ会社は、HTPがCCよりも有害性が、かなり低いと解釈可能な広告を行っています。
 しかしHTP特有成分や、CCと同等量の成分、低減していない化学成分があることは広告に掲載されていませんし、また現在のエビデンスからは、HTPの受動・能動喫煙とも、HTPはCCよりも害が少ないとは言えません。
 これまでの先行研究は、CCと比較してHTPが有害と思うかを尋ねたものがほとんどでした。今回の研究では、CCとの比較ではなくHTP自体が有害と思うかを、我が国8,200人余りの男女に尋ねた結果を、性別に現在の喫煙状況ごと(非喫煙、CCのみ使用、HTPのみ使用、CCとHTPの両方使用)に検討しました。その結果、男女ともに現在非喫煙者と比較して喫煙者、特にHTP使用者は「HTPは自分への害はほとんどない」「HTPは他人へ害を及ぼさない」と認識している傾向が示されました。さらに、「子どものいる屋内空間でのHTPの使用を禁止しなくてもよいか」の認識を検討したところ、「禁止しなくてもよい」と認識している人は、自分や他人に対する認識と同じで、特に男性よりも女性のHTP使用群において有意に高い傾向が示されました。
 HTPに害が少ないという認識は、タバコ会社の広告に影響されていると思われます。なぜなら我々の最近の分析で、2017-2022年間のHTPに関する論文は、タバコ産業関連からの論文が独占していて、その半数以上がHTPはCCよりも望ましいと結論または示唆したことが明らかになったからです(Suzuki H, et al. Nicotine Tob Res 2024; 26:520–6.)。
 今回の結論として、男女ともに現在非喫煙群と比較し、特にHTP使用群は、HTPエアロゾルの有害な影響を過小評価する傾向があることが示唆されました。今後、自分と他人への健康リスクを減らすために、政策立案者は誤解を招くようなタバコ製品広告の規制措置を実施し、医療提供者は最新の健康情報を市民に提供する必要があると考えます。


関西国際空港での販売の様子。おしゃれな雰囲気で展開されているが。
(提供:和歌山県立医科大学 藤吉朗教授)