本学準研究員 溝口綾人先生の論文が英文誌 Cureus Journal of Medical Science に掲載されました
本学準研究員 溝口綾人先生(本学理学療法学科卒業、大学院修士課程修了、榊原白鳳病院リハビリテーション臨床研究部)の研究が英文誌 Cureus Journal of Medical Scienceに掲載されました。
溝口綾人先生は学部生、大学院生、そして現在も本学副学長、研究科長 鈴木俊明先生の指導のもとで研究活動を頑張っておられます。
この論文では、15名の健常者を対象に、母指の掌側外転動作を20%最大随意収縮(MVC)で制御する課題を用いて、脊髄前角細胞の興奮性の変化をF波によって評価しました。特に「視覚フィードバックを伴う調節課題」と、「負荷に抗するだけの非調節課題」の2条件を比較し、課題の前後で脊髄前角細胞の興奮性の指標である振幅F/M比やF波出現頻度、さらに運動技能を分析しました。
その結果、調節課題後にはF/M比に低下がみられた一方で、運動技能の変化やF波の出現頻度には変化がみられませんでした。また、非調節課題では全ての指標に変化はみられませんでした。
調節課題後の振幅F/M比の低下は、大きな運動単位の興奮性の選択的な抑制や、再発火するタイミングの変化によるものである可能性が示唆されました。一方で、F波出現頻度には変化がなく、反応した運動単位の総数は維持され、小さな運動単位の関与が増加した可能性が考えられました。
非調節課題ではこうした変化は見られず、力の調節という能動的関与が脊髄前角細胞の興奮性の変化に寄与していることが明らかとなりました。さらに、運動技能の変化はみられませんでしたが運動適応と神経適応のタイミングが必ずしも一致しないという先行研究を支持する結果も得ることができました。
本研究の成果は、能動的な力の調節が脊髄レベルで即時的な影響を与えること、さらに筋緊張の調節にも関与する可能性を示唆するものであり、今後のリハビリテーションへの応用が期待されます。
是非、一度ご一読ください。
Practicing Active Control of Thumb Force Alters the Excitability of Anterior Horn Cells of the Spinal Cord
Ayato Mizoguchi, Katsunori Kiyohara, Naoki Kado, Toshiaki Suzuki