2025年12月08日
大学院
京都大学人文科学研究所にて開催された研究発表会において、本学 王財源教授が講演
2025年12月6日、京都大学人文科学研究所において研究発表会が開催されました。 本学からは 王財源教授 が登壇し、以下のテーマで研究成果を講演いたしました。
講演タイトル
中医学の二極化と再評価の系譜
—— 民国期動乱から現代政策・国際展開までの歴史的考察 ——
私たちの研究は、清末から民国期、中華人民共和国成立後を経て現代に至るまでの「中医(中国伝統医学)」の制度化と教育の歩みを整理し、その歴史的意義と今日的課題を明らかにするものです。
◆分析の三つの視点
①制度史:国家政策や教育制度の中で、中医学がどのように位置づけられてきたか。
②思想史:古典理論と近代科学の間に存在する緊張関係。
③現代的課題:臨床・教育・研究の統合と、師から弟子へと受け継がれる精神性の継承。
これらを通じて、「伝統中医学」と「現代中医学」という二つの潮流が、対立と補完を繰り返しながら併走してきた歴史的過程を示しています。
◆国際的評価の広がり
2006年、中国国務院は鍼灸を国家級非物質文化遺産に認定しました。さらに2010年にはユネスコにより「中国鍼灸」が無形文化遺産に登録され、国際的評価が大きく広がりました。その背景には、『黄帝内経』をはじめとする古代医書により体系化された治療遺産があります。五臓六腑や気・血・津液の調和という視点から人体を捉える考え方は、臨床家によって継承され、今日の診療現場でも活用されています。
◆社会的意義
少子高齢社会を迎えた現代において、中医学は健康長寿社会の実現に貢献する可能性を持っています。高齢者が若さや活力を取り戻し、経済的負担を軽減するためにも、本学がもつ伝統医学の知恵を次世代へと確かな水脈として継承することが重要です。
今回の研究は、中医の歴史的歩みを再構成し、鍼灸が果たすべき役割を再認識するとともに、教育・臨床・研究の課題を再考するものです。



京都大学人文科学研究所