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 提示された手の画像が「右か左か」を判断し,その応答にかかる反応時間を測定する評価方法を,手のメンタルローテーション課題と呼びます.今回,手のメンタルローテーションの反応速度が,運動イメージによる手指の器用さの向上に関連するかを,本学保健医療学部 理学療法学科 福本悠樹講師,東藤真理奈講師,鈴鹿医療科学大学 保健衛生学部 藤井啓介准教授,そして全体的な研究指導に本学副学長 鈴木俊明教授が協力し調査を行いました.本研究成果は国際誌NeuroReportに掲載され,雑誌の表紙にも起用されました.

研究の概要

 運動イメージは,運動パフォーマンスを向上させますが,その効果には個人差があります.手のメンタルローテーション課題の反応時間は,その人がどのようなイメージ戦略(視覚的イメージか筋感覚的イメージか)を用いているかを反映すると考えられています.そこで, 本研究の目的は,手のメンタルローテーション課題の反応時間によって,運動イメージ後の手指の器用さの変化や,脊髄運動ニューロンの興奮性の変化を説明できるかを明らかにすることでした.結論として,手のメンタルローテーション課題の反応時間は,単なるイメージ能力の高さではなく,運動イメージ戦略の違いを反映していたことが示唆されました.具体的には,反応時間が遅い人は,自分の手を頭の中で動かす筋感覚的イメージを優先的に使用している可能性が考えられ,その結果として運動イメージによって手指の器用さの向上がしやすい結果でした.

研究内容

 研究の対象者は,健常大学生とし,まず対象者の手のメンタルローテーション反応時間を測定し,その後に安静時の脊髄運動ニューロンの興奮性(F波)を評価しました.運動イメージ前にベースラインとなる手指の器用さ(パデュー・ペグボード課題)の評価し,60秒間の運動イメージと脊髄運動ニューロンの興奮性を評価した後、運動イメージによる手指の器用さの変化を再評価しました.さらに,手のメンタルローテーション反応時間は認知機能にも左右されるため,交絡因子の評価として,ワーキングメモリ機能も評価しました.
 結果,左手のメンタルローテーション反応時間が遅いグループは,速いグループと比較して,運動イメージ練習後に手指の器用さがより顕著に改善しました.しかし,運動イメージ中の脊髄運動ニューロンの興奮性変化については,グループ間で差や特筆すべき特徴は認められませんでした.また,左手のメンタルローテーション反応時間は,ワーキングメモリの要素の一つである音韻ループ(言葉の記憶:Digit Span Backward)と弱い相関を示しましたが,視空間的な情報の保持(図形記憶)や,注意の制御機能(ストループテスト)との間には相関は認められず,課題の成績は一般的なワーキングメモリ機能だけでは十分に説明できませんでした.

臨床への示唆

 従来,運動イメージの能力評価は,患者の自己申告に基づく主観的なアンケートが主でしたが,手のメンタルローテーション課題を用いることで,誰が運動イメージ練習の恩恵をより受けやすいかを特定し、患者個々のイメージ戦略に基づいた適切な介入を選択するための,簡易的かつ有用なツールになり得る可能性があります.

論文情報

Fukumoto Y, Fujii K, Todo M, Suzuki T. Hand mental rotation reaction time reflects motor imagery strategy and predicts changes in finger dexterity after motor imagery. Neuroreport. 37(11):420-429, 2026.