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Blog 関西医療大学NOW!

 臨床看護学ユニットの森岡広美です。私たち看護師は、看護師になるための学生時代や看護師として勤務する中で、Quality of life(クオリティ・オブ・ライフ;以下QOL)という言葉をよく耳にし、口にします。学生時代の実習記録に取り組むために徹夜をしているときなどは、呪文のような感じの言葉です。
 この言葉の意味は、患者様の身体的苦痛の軽減、精神的、社会的活動も含めた総合的な活力やいきがい、満足度の質を意味し、「生活の質」、「生命の質」とも表現します。この“QOLの向上”こそが、患者様の病気や状況が各々異なっていたとしても、看護師が患者様個々に合わせて、ケアを提供し、その質の向上を目指すのが看護の本質だと考えます。
 患者様のQOLの向上を目指そうと思えば、看護師のQOLの向上も、とても大切なことだと思います。臨床で勤務している時代は、「業務改善」という角度で、より質の高い看護が患者様に提供できるようにするためには、どのような改善をすれば良いかということを中心に研究を行ってきました。その結果、当たり前といえば当たり前ですが、単に病院という施設や組織が充実していても、そこには繋がらず、“看護師の質”が大切なことがわかりました。言い換えれば、看護師自身が元気でないと、質の良い看護の提供には繋がらないというところにいきつきました。そこで、看護師のQOLはどうすれば保てるかと考え、看護師が職場に満足し、就業を継続する要因について研究を行いました。その結果、看護師のQOLの向上には、メンターの存在が大きいことがわかりました。メンターの語源は、古代ギリシャの詩人ホメロスの有名な叙述誌『オデュッセイア』の登場人物「メントール」に由来します。王の親友であるメントールは、王の遠征中、息子の教育を任され、息子の良き支援者、指導者、理解者となり、見事に帝王学を身につけさせました。私の研究におけるメンターの定義は、あなたの師匠のような人で、将来のキャリアやワーク・ライフ・バランスの問題で悩んだときや、仕事で困ったときに支援してくれる、夢や目標を明確にするための助言をしてくれるなど、あなたが職業人として、また、人間として発達・成長するのを支援してくれる人としました。これは同じ場所に勤務していることを指すわけではありません。むしろ、看護師でなくてもよく、このメンターの質や距離間というものも重要ではあり、程よい距離があった方が有効であることも明らかになりました。メンターが存在する看護師は、職場に馴染み、満足し、就業を継続できるということです。看護師を目指す皆さんも、既に看護師の方も、そのようないいメンターを見つけることがとても大切で元気で居ることができるコツだとも思います。   
 最近の研究は、私自身が経験を重ね(看護師のみでなく人生の経験も…)、今まで着手できなかった「死」の部分も研究課題としています。それは、「生」と「死」は別のものではなく、「生」の延長線上に「死」があるという考えからです。先ほどの“QOL”のみが充実していても、「良い人生だったな」とは思えないと思います。そこで、アドバンス・ケア・プランニング(以下ACP)やQuality of dying(クオリティ・オブ・ダイイング;以下QOD)の研究についても着手しています。自分自身が納得いく人生にするための意思決定(ACP)やどのような最期を迎えたいか(QOD)の質の向上を目指した研究にも取り組んでいます。これらの研究は、現在、様々な職種の人々とコラボレーションし、多方向から切り込んでいます。
 死に至る人は100%です。その日・その時まで人生の質を高めるために、一緒にQOLやQODについての研究を探究しましょう!!お気軽にお声かけください。ご興味のある方は、著書もご一読下さい。

森岡広美監修『人生を自分らしく生き抜くための意思決定』金芳堂、2021