FACULTY
/GRADUATE SCHOOL
Blog 関西医療大学NOW!

 臨床検査学ユニットの大瀧です。細菌感染症を適正な抗菌薬で治療する際は、原因菌を決定することが言うまでもなく非常に大切です。細菌検査においては、感染由来材料をスライドガラスに塗抹して顕微鏡で観察する「顕微鏡検査(グラム染色など)」、検体の培養後に検出菌の菌名を決定する「同定検査」、検出菌の抗菌薬の効果を判定する「薬剤感受性検査」がありますが、薬剤感受性検査の結果が判明するには検査開始から3日程度を要します。この間は適正な治療ができないかと言うと、決してそうではなく、グラム染色や同定検査、患者背景、蓄積された疫学情報を合わせて、多くの症例で適正治療に導くことが可能です。
 これまで同定検査による菌名の決定は結果判明まで丸1日を要していましたが、近年は質量分析器の登場により発育菌があれば30分以内に結果が判明するため、大きなブレイクスルーになりました。しかしながら、まだ半数以上の微生物検査室にはこの機器はなく別手法による迅速同定検査の需要がある状況です。これまで用手法による迅速同定検査はあまり注目されていなかった感がありますが、抗菌薬適正使用チームの発展とともに近年見直されています。ここではその一部をご紹介します。

 図はClinical and Laboratory Standards Institute (CLSI) のガイドラインが推奨するEscherichia coliの簡易同定法について示しています。実はCLSIに記載されているフローチャート(A)は引用元の文献を簡素化しており,溶血を伴うインドール陽性の腸内細菌目細菌がE. coliと誤同定されるリスクがあります。当グループの検討の結果,引用元の文献に準じたフローチャート(B)を用いた方が誤同定のリスクがより少ないため,こちらを用いることを推奨します。日常の分離培養で羊血液寒天培地とBTB乳糖寒天培地(またはマッコンキー寒天培地)を用いている施設が多いと推測しますので,例えば乳糖分解する溶血集落を培養翌日に認めた場合は,オキシダーゼ陰性およびスポットインドール陽性のグラム陰性桿菌であればE. coliとして同定が完了します。慣れている方なら1分以内でできそうな作業です。また,乳糖分解する非溶血集落でもPYR試験陰性であればE. coliと同定できます。80%以上の株は培地所見とPYR試験だけで同定が完了することが判明していますので,部分的な活用でも十分かと思います。ここでは私たちが実際に検証したE. coliの例を紹介しましたが,その他に関しては是非ガイドラインなどを参照し,実践してみてください。

【参考文献】
喜多いずみ,大瀧博文.医学検査, 70(4):733-739, 2021.
大瀧博文.検査と技術,51(4), 434-439, 2023.