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Blog 関西医療大学NOW!

 皆さん、こんにちは。理学療法学ユニットの米田です。私は理学療法士ですが、理学療法を必要とする患者さんは、さまざまなケガや病気によって、以前のように自由に動くことができなくなる方々です。ですので、これらの患者さんがもう一度自由に動けるようになるよう、必要とされる動作を理学療法によって再び覚えてもらう必要があります。この動作を覚える一連の過程を学問的には「運動学習(motor learning)」といいます。例えば、上手に箸や鉛筆が使える、自転車に乗れる等々から始まり、誰しも興味のあるスポーツや技能が上手になるよう、皆さんも頑張って練習されていた(している?)と思います。これらはすべて運動学習なのです。  
 運動学習を効果的に向上させるためには、学習者に与える情報やその与え方、学習の方法、学習機会の間隔と頻度、学習者の心理状態など、さまざまな観点を検討する必要があり、患者さんがより良く運動学習できるための研究を行っています。 まず、運動学習において学習者に与える情報として代表的なものに、KP(Knowledge of performance)とKR(Knowledge of result)があります。KPは遂行中の運動の特徴を伝え、KRは実施した運動の結果を伝えます。例えばバスケットボールの場合、シュート時の構え方やスローの仕方を教えるのがKPで、シュートした結果、外れた場合に「どのくらい外れたのか」を教えるのがKRとなります。理学療法でも患者さんに立ち方や歩き方といった動作の方法を教えることは大変重要ですが、動作の方法ばかりを教えてしまうと、教えたやり方でしか患者さんは動作をできなくなりますし、中には理学療法士をいつも頼ってしまうようになる場合もあります。患者さんにとって最も大事なのは、自分自身で、かつ自分の意思で自由に動けるようになるということです。そこで、患者さんに自分自身で動作を正しいものに修正していく能力を身に付けてもらえるよう、効果的なKRの与え方について研究しています:※1)。 また、運動学習の方法についても検討する必要があります。例えば、前述したバスケットボールのシュートの場面では、シュート時の姿勢、両脚や両腕の伸ばし方、それらの力加減といった獲得する動作を構成する運動要素について、同時に練習する方が効果的か、それとも別々に運動する方が効果的かといったことを基に、検討しています※2)。 さらに、運動は「情意・情動→発意→計画→実行」の過程を経て起こります。つまり、いくら学習者に効果的なKRを与え、良い学習方法を与えたとしても、学習者の心理状態によっては、まったく動作が上手くならないことがあります。そこで、どのような心理状態の時に運動学習が進むのかといったことも検討しています※3)。 今後、運動学習について興味があるのは、やはり運動生成の一番初めの「情意・情動→発意」の過程で、心理バイアス(psychological bias)や自己効力感(self-efficacy)による運動学習への影響も検討していきたいと考えています。


 【文 献】