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保健看護学科 有馬美保

「先生、本当に私が介助するんですかあ?」助産学実習で初めての産婦さん(陣痛が始まりもうすぐ出産する女性)を受け持った学生の言葉です。私は、「あなたが受け持ちですよ。」と内心思いながら、「そうですよ。そろそろ準備していこうか。」と笑顔で指導を始まます。

助産師になるためには学士課程の4年間の中で免許を取得するものや大学卒業後の専攻科での1年課程などいろいろな養成課程がありますが、いずれの課程においても正常な分娩経をたどる方を受け持ち、10例程度の分娩介助を経験することが必須条件となっています。
本学の保健看護学科では、3年生の終わりの3月から4年生の4月~6月にかけて、助産師課程を選択した学生は助産に関する知識と技術を学び身につけます。特に分娩介助技術については、学生も全く初めての学修です。それらの技術は、テキスト等では学ぶことが難しく、まず、学内の演習でトレーニングします。その様子は、まるでお師匠さん(教員)と弟子(学生)の関係に似ていて、手取り足取りで技術を学びます。学内でファントームという実際を想定した教材で、助産師役と産婦役を入れ代わりながら何度も何度も練習します。そして、緊張感のある中、学内の実技試験に合格して、やっとのことで助産学実習に出て、本当の産婦さんを受け持つのです。
 出産は本当に千差万別です。100人の産婦さんがいれば100通りのお産があってそれぞれ異なります。あっという間に生まれる人、緊張が強くガチガチになっている人、陣痛の痛みに思わず声を漏らす人、なかなか有効な陣痛が来ず焦っている人などです。その一人一人と向き合い、寄り添い、その人の産む力を最大限に発揮できるようお手伝いすることが助産師の役割です。この少子化の時代ですから、出産を実際に見学したこともない助産学生にとって、助産学実習における1例目の分娩介助は超えることのできない高いハードルとして感じているように思います。このハードルを乗り越え、2例、3例と経験を重ね、10例目の分娩介助を終えたとき、助産学実習用の臙脂色のユニフォームは、「汗と涙」の重みから、1人1人の母子の命と向き合った「自信」の重みへと変わっていくのです。
 この春も無事に5名の新人助産師さんを無事に送り出すことができました。1年をかけて一人ひとりの産婦さんと向き合うことの大切さを学んだ彼女たちは、産婦さんに向けるのと同じ素敵な笑顔を残して巣立っていきました。