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Blog 関西医療大学NOW!

はり灸・スポーツトレーナー学科 古家信介

 皆さんはスポーツのチームスタッフとして、チームとともに行動する時にどういうことが起こるかどれくらい想定しているでしょうか。選手のケガだけをみればいいのではありません。ケガはもちろんのこと、発熱や咳、下痢や腹痛、海外への遠征の際には飛行機でのストレスや頭痛、時差ボケ、食事や習慣の違い、暑さや寒さ等の対応、また異なる言語を話す人々との連絡や交渉等多くの点で対応を迫られることがあります。
 私は2017年にインドで開催されたFIFA U-17ワールドカップの日本代表チームスタッフとして、約2週間インドに滞在しました。チームには既に整形外科のドクターがいらっしゃいましたが、前年に行われたU16 AFC選手権(FIFA U-17ワールドカップ予選も兼ねています)の際にチームの選手・スタッフの多くが下痢や腹痛に悩まされたこともあり、主に内科的対応をするという目的で、私も加わったという経緯です。ちなみに当時A代表以外は基本的にドクター1名での対応でしたが、A代表以外で初めて2人ドクター制をとったのが、この大会でした。
 まずは、口から一番入りやすい水の管理から開始し、手洗いとうがいの徹底、消毒も行いました。水について水道水はもちろん、シャワーの水も口から入らないようにして、歯磨きなどもFIFAから支給されたミネラルウォーターのペットボトルでのみ行うようにしました。また滞在先での食事も、生の物は果物も含めて出さないようにし、しっかりと加熱してあることや、辛すぎる味付けにしないなど、味のチェックをシェフと共に行い、また滞在先スタッフともミーティングを行い、できるだけお腹の調子を崩さないように心がけました。
 簡易の大腸菌検査キットも持参していたのですが、やはり滞在先の水道、シャワーやプールの水まで陽性であり、リカバリメニューでプールに入る時も、ゴーグル着用で水を口に入れないように選手に伝えていました。これが良かったのか、ワールドカップ本選では下痢の選手・スタッフを1名も出すことなく試合に臨むことができました。結果はラウンド16でイングランドにPK戦の末敗れてしまいましたが、その後イングランドは勝ち進み優勝しました。
 写真はスポーツ現場で測定するWBGTという暑さ指数です。この数字であれば、メディカルスタッフはどういった事に注意して活動する必要がありますか?考えてみてください。
このように大会や遠征でチームに帯同する際には、ケガ以外の部分でも対応することが多く、また海外では勝手が全く違うので大変ではありますが、非常に面白く経験としても培われます。ケガだけなく選手やスタッフを含めたチーム全体を見る目が必要です。