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Blog 関西医療大学NOW!

基礎医学ユニットの大島といいます。
2017年にJ.Physiolにまとめた研究を紹介します。
 この研究では、脳幹の青斑核にあるノルアドレナリンを含有している神経が、大脳皮質にどのような影響を与えるか調べました。実験動物としてはマウスを用いました。マウスなどの体性感覚野には、1本1本のヒゲに対応する領域が観察できます。これをバレル皮質と呼びます。体性感覚野は間脳の視床というところから、体性感覚(触圧覚など)の情報を受け取っています。マウスでは、バレル皮質と視床を付けたスライス標本を作成することが可能なため、この標本を用いて研究を行いました。視床からバレルに投射する線維、2‐3層からバレル(バレルは4層)に投射する線維の2か所で電気刺激を行いました。バレル内の興奮性ニューロンと抑制性ニューロンから記録を行いました。スライス標本を浸している液にノルアドレナリンを投与しました。
 その結果、視床と2‐3層の刺激に対して、ノルアドレナリンにより興奮性と抑制性ニューロンともにその反応を抑制しました。さらに、どの受容体がこの抑制に関与しているか調べるため、a2A受容体をノックアウトしたマウスを用いて、同様の実験を行いました。その結果、抑制は消失しました。また、電気生理学的手法を用いて、この受容体がシナプス前に存在することもわかりました。
 これらの結果から、青斑核のノルアドレナリン含有ニューロンは、バレル内で他の部位からの入力をa2A受容体を介してシナプス前性に抑制させることが明らかになりました。
 ノルアドレナリンは、中枢神経系内でS/N比(シグナルとノイズの比)を改善する働きがあることが報告されています。我々の結果は、ノイズレベルの信号を抑制させることで、重要な信号をピックアップするのに関与していることを示しているかもしれません。