関西医療大学

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臨床検査学ユニットの矢野です。私が行っている研究について紹介します。

現在は“二人に一人ががんに罹り、三人に一人ががんで亡くなる時代”と言われています。
解明されている発がんメカニズムの多くは多段階を経ることが知られていますが、それぞれのきっかけとなる事象は生活習慣や環境によってもたらされるものも多く、平均余命が伸びればそれだけがんに罹患するリスクが高まるのです。
細胞診検査はがん診療の最前線で幅広く実施されている臨床検査で、がんの早期発見を主な目的として発達してきました。剥離細胞、病変部擦過、腫瘤穿刺吸引と様々な方法で採取された多種多様な細胞の判定には高度な専門的知識が必要ですが、診断精度の向上に最も必要なことは高品質な標本作製です。

一方、液状化細胞診検体 (Liquid Based Cytology: LBC)の技術は、細胞診標本の世界的標準化を図る目的で普及が進められており、限定的な範囲に厚さを制御しながら塗抹できることと残余細胞を保存液中に長期保管できることが特長です。LBC標本では効率よくがん細胞を検出することが可能となり、画像解析装置によるスクリーニングも実現できるようになりました。
さらに、残余検体に含まれる変異細胞やがん細胞を用いた様々な検査を行うことが可能で、そのひとつにがん細胞のゲノム解析があります。ゲノム解析結果は治療薬選択の拠り所として活用されますが、試料中のがん細胞の割合が解析精度を左右するため、細胞診断を確実に行わなければなりません。ところが、LBC保存液中のがん細胞の形態は時間の経過とともに変化し、診断精度に支障をきたすことがあります。また、症例によっては免疫細胞化学染色による判定も求められますが、LBC保存液中で抗原性が保持される期間に関する研究もまだ充分とはいえません。

述べてきました現状を鑑み、私はLBCの原理別細胞像の解析、LBC保存液長期保存による細胞像の変化、免疫細胞化学染色の精度などの研究を行っています。“がんゲノム医療の実装化”により、細胞診検査にがんゲノム医療への積極的な関与が求められる時代が来ています。細胞診検査に携わる細胞検査士の方々には、新しい時代を拓く意気を持ってLBCを用いた細胞診の研究に取り組んでいただきたいと願っています。