関西医療大学

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基礎医学ユニットの東家です。皆さんは「スンクス(Suncus)」という動物を知っていますか? 和名では「ジャコウネズミ」と言います。ただし、ネズミの仲間ではありません。モグラが属する食虫類というグループの一員です。確かに、下の写真(図1)を見ると顔つきはモグラ似ですね。この動物は私たちヒトを含む全ての哺乳動物の祖先に相当する生き物で、約1億年前の恐竜の全盛期に既に生息していたことが明らかになっています。現在、このスンクスは実験動物として利用されていますが、マウス、ラット、ハムスターなどの医学生物学研究によく用いる動物にはない様々な特性を持つことが分かっています。その一つに「扁桃(へんとう)」があります。
扁桃は私たちの喉の奥に配置されている免疫系の組織で、口や鼻から入ってくる微生物や異物に対して免疫学的に応答する門番として重要な役割を果たしています。風邪を引いたときに喉が痛くなって「扁桃腺が腫れた」と表現することがありますね。これは、感染のために扁桃が炎症を起こしているからで、高熱が出るのもそのためです。
このように扁桃には割と身近な印象がある反面、基礎的な研究は十分に進んでおらず、未だ多くの謎も残されています。これは、マウス、ラット、ハムスターが扁桃を持たない動物であるため研究が行えないことが理由なのですが、スンクスには口蓋扁桃と耳管扁桃の2種類の扁桃が存在することから、扁桃研究を進めていく上で有用な実験動物として注目されたのです。
そこで、スンクスのT細胞やB細胞を特異的に認識するモノクローナル抗体を作製し、扁桃を機能形態学的に解析してみました。その結果、扁桃は血流を介したリンパ球再循環で全身の免疫臓器(脾臓やリンパ節)と連携しながら、体内に侵入した異物に対して活発な抗体産生を行う組織であることが分かりました。また、リンパ上皮共生という口腔に面した粘膜の一部では、T細胞とB細胞が口腔内の抗原を捕捉する特殊上皮細胞(M細胞)と接着分子を介して互いに密着したクラスター(塊)構造を形成し、その内部でリンパ球の活性化や抗体産生を行っていることも分かりました(図2、3)。
ヒトでは、扁桃の慢性的な炎症が腎臓や皮膚、骨などの遠隔の他臓器に生じる病変の原因になること(扁桃性病巣感染症)が知られています。スンクスという実験動物が、扁桃の基礎的な研究のみならず、このような疾患の発症メカニズムを探る研究にも役立って欲しいと思っています。

参考図書:『スンクスの生物学』(織田銑一、東家一雄、宮木孝昌 編、磯村源藏 監修、学会出版センター、2011)ISBN978-4-7622-3064-6