FACULTY
/GRADUATE SCHOOL
Blog 関西医療大学NOW!

 基礎医学ユニットの岩橋です。ワトソン・クリックによる歴史的なDNA二重らせんモデルの発表(1)から70年が経過しました。発表後、世界中の多く研究者により検証がなされ、このDNA2重らせんモデルの正しさが、確認されています。このモデルでは、アデニン(A)とチミン(T)、グアニン(G)とシトシン(C)塩基間に特異的な相互作用が存在するとされ、この特異的な相互作用の存在についても分光学的な手法を用いた証明(2)がなされています。アデニンとチミン、グアニンとシトシン塩基間の特異的な相互作用を介して遺伝情報が親から子に伝えられてゆきます。もし、この相互作用の特異性に乱れが生ずると、突然変異が起こると考えられます。
 私はこの相互作用の特異性の乱れについて、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)を用いて調べています。ESI-MSはタンパク質などの不安定な生体高分子の質量測定に用いられていますが、マイルドなイオン化法であるため、水素結合のような弱い分子間力で結合した会合体を解離させずに検出することができます(図1)。

 染色体のテロメア部分の3’末端にグアニンの多い配列TTAGGGが1000回以上も反復しており、図2に示すような環状グアニン四量体を形成していると考えられています。実際、ESI-MSをもちいてそのグアニン四量体が検出されます(3)(図2)。核酸塩基の混合溶液のESI-MSにより、混合溶液内に生じたプラスあるいはマイナスの荷電を有する非ワトソン・クリック塩基対を検出し、どの塩基とどの塩基が会合体を形成しているか、それぞれの会合体の相対的な安定性を調べています。

(1) Watson JD & Crick FHC Nature 171, 737-738 (1953).
(2) Kyogoku Y, Lord RC & Rich A Science 154, 518-520 (1966).
(3) Fukushima K & Iwahashi H Chem. Commun. 895-896 (2000).