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Blog 関西医療大学NOW!

 臨床身体機能学グループの巽です。私たちは皆、誰かに必要とされたい、認められたいという気持ちを持っています。仲間として受け入れてもらいたいし、孤立もしたくない。もしこれらの願いが満たされないとしたら、生きること自体が辛くなってしまうでしょう。しかし、現実はいつも私たちの思い通りにはなりません。願いが叶うことの方がむしろ珍しく、人間関係に疲れを感じることも少なくないかも知れません。
人の「心」は、時にバランスを崩してしまうことがあります。心は周囲の環境から大きな影響を受けやすく、弱ってしまうと日常生活や作業にも影響が出てしまいます。集中力が低下したり、ミスが増えたりと、普段は難なくこなせていたことができなくなり、それがさらなるストレスを生む悪循環に陥ってしまうのです。
 心の状態が悪化している時、その辛さを言葉で表現するのは非常に困難です。しかし、周囲に理解してほしいという切実な願いは強く抱えています。そのような時には、言葉を交わすのではなく、対象となる方と一緒に何らかの「作業(活動)」を共にするのが効果的です。共に作業を行うことで、人と人との間に自然と関係性が生まれやすくなります。私が取り組んできた研究の1つに、適切に共同作業を行った相手に対しては、「敵意」が減少するという研究結果を示しました。
つまり、人間関係を構築する上で、言葉だけでなく「作業」が重要な媒介となるのです。例えば、スポーツ大会で同じチームになった人に親近感を覚えたり、新入生歓迎会や地域交流のイベントで交流が深まったりするように、「作業」は人間関係を円滑にする様々な場面で活用されています。しかし、あまりにも日常に溶け込んでいるため、その効果を意識することは少ないかもしれません。

 特に、心の健康を損なってしまった人に対するケアの現場では、「作業」がもたらす効果を科学的に示すことが求められます。「作業」には、料理、音楽、園芸、スポーツ、ゲームなど、多岐にわたる活動が含まれます。どの活動が最適かは、その人の好み、能力、望む関わり方によって異なります。「作業」の種類が非常に多いため、それぞれ具体的にどのような効果をもたらし、どのように活用できるのかについては、まだ十分に解明されていません。 私たちは、健やかに生きるために、「作業」をどのように活用すれば良いのか、その可能性を追求したいと考えています。この分野には、あなたの研究によって解き明かされるべき、興味深く重要なテーマが数多く眠っています。私たちと共に、「作業」の可能性を追求してみませんか?