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Blog 関西医療大学NOW!

 地域・老年看護学ユニットの岩井惠子です。
私が関西医療大学へ赴任した2年目に、前学長の吉益先生とすでに退職された紀平先生に声をかけていただき、串本町の限界集落の調査を行うチャンスをいただきました。
それがきっかけで、研究開始当初は人口15名という小さな集落に13年間、コロナで緊急事態宣言が出て身動きが取れなくなった時以外は、月に1回現地を訪問し、訪問回数はゆうに100回を超えました。

 エスノグラフィーとは、現地の人々に溶け込み、現地の人の語りを記録していくというという手法の研究で、最初の2~3年はとにかく住民の皆さんの声に耳を傾け、現地に溶け込むことを目的としました。そして地域看護の一環として、年2回の健康診断も実施してきました。これらから、この限界集落と呼ばれる集落とそこに住み続ける住民の分析を行なっています。今では毎月の私の訪問を住民の方々は楽しみに待ってくれていて、私も研究を超えて、現地へ行くことが楽しみになっています。
私の専門は「老年看護学」ですが、この研究は「老年社会科学」の要素も多分に含んでいると考えています。したがって、その集落の歴史、またそこで生活をする住民の歴史を、資料や語りから集め、高齢者だけの過疎の集落で、「幸せ」と言って暮らしている住民の生活を分析し、不便なのに幸せというparadox(相反する結果)を解明しています。この13年の間に住民数は減少していくばかりですが、住民の幸福感は維持できています。公共交通機関もなければ、商店もない、住居以外何もない集落で、私たちからは想像を絶する環境下でなぜこのように幸せな生活を継続できるのかを研究しています。
 訪問には、大学で協同研究をしている先生方が毎回同行してくれています。また、健康診断やクリスマスには希望する学生たちも一緒に訪問し、住民の方々を喜ばせています。本学には保健看護学部と保健医療学部に合わせて6学科ありますが、今まで5学科の学生のみなさんが参加してくれました。また、協同研究ではヘルスプロモーション整復学科の相澤先生が、住民の方々に健康体操を2ヶ月に1回程度実施して、好評です。
 フィールドワークという研究は、医療系ではまだまでマイノリティです。しかしながら健康という考え方もその人の価値観で大きく変わっていき、いわゆる多様化しています。住み慣れた場所でいつまでも生活を継続する意味についても、この研究で考えていくつもりです。