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 臨床検査学ユニットの大瀧です。Streptococcus agalactiae,通称,B群連鎖球菌(GBS)は約20%の妊婦の膣や直腸に常在するとされ,主に出産時の産道感染による新生児の髄膜炎や菌血症の原因になることが知られています。この対策として全妊婦に対するスクリーニング検査が産婦人科診療ガイドラインにより推奨されており,スクリーニング検査と分娩時の抗菌薬投与によりこれらの発症を予防することができます。保菌妊婦における出産時発症予防投与は,ペニシリン系抗菌薬が主として推奨されていますが,他の検査材料では低感受性株の報告もあり,今後の動向が注視されています。また,β-ラクタム系抗菌薬に対するアレルギーを有する患者に使用されるマクロライド系抗菌薬は,従来から耐性株が多いことが示唆されていますが,GBSスクリーニング検査は自費診療のため,分離株の薬剤感受性試験は実施されないケースがほとんどであり,スクリーニング由来株に特化した薬剤感受性試験のデータは不足しているのが実際です。当研究グループでは妊婦のGBSスクリーニング検査より分離された臨床分離株の薬剤感受性の特徴を考察することを目的として,各種抗菌薬の薬剤感受性試験および莢膜型の調査を約200株を対象として実施しました。
 今回の検討結果では,β-ラクタム系抗菌薬に対して全株が感性を示しました。マクロライド系抗菌薬の感性率は40%前半,クリンダマイシンの感性率は60%前半と,厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)のデータと比較して約15~20%低値を示しました。特に,莢膜型別ではIb型, III型, V型において感性率が低い傾向でありました。キノロン系抗菌薬はIb型のみ顕著な耐性傾向でした。これらの結果はおおよそ既報と一致しており,さらに詳細なゲノム解析を進めて,この分野の進展の一助に寄与できればと考えています。